稲の生育タイムラプス

農園の田んぼにトレイルカメラを立てました。5月から10月まで約6ヶ月、種籾が芽を出してから穂が実るまでを毎日撮り続け、最後に1本のタイムラプス動画にまとめています。
使ったのは、1万円台のトレイルカメラと自由雲台、ホームセンターの45mm角材、自作の雲台マウント、自作写真整理アプリです。3Dモデルもアプリも公開しているので、同じことをやりたい方はそのままどうぞ!

トレイルカメラを角材に固定します。

構成

要素内容入手先
ハードウェア市販トレイルカメラ
小型自由雲台
45mm角材(120cm)
雲台マウンタ(自作)
M5x20 (鍋ねじ)x2 、ナット x2
トレイルカメラ:Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DRCS42QV?ref_=ppx_hzsearch_conn_dt_b_fed_asin_title_17

小型自由雲台:Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B073VF6HC8?ref_=ppx_hzsearch_conn_dt_b_fed_asin_title_16

雲台マウンタ:Thingiverse
https://www.thingiverse.com/thing:7402090
ソフトウェア写真整理アプリ「fieldcam-organizer」(自作)GitHub
https://github.com/23style/fieldcam-organizer
写真の軽量化Powertoys のImage Resizer-
動画編集Clipchampでタイムラプス動画化YouTubeで公開

先に成果物をご覧ください。5ヶ月を1:30に凝縮しています。

なぜ撮りたかったのか

米づくりのための「記録画像」がほしかったことです。理由は3つありました。

1.年ごとに比較したい

稲の生育は年によって変わります。同じ日付で去年と今年を並べて見られれば、今年の生育が早いのか遅いのかを客観的に判断できます。

2.出穂日を見落としたくない

最初に何本かの稲が穂を出し始め、おおよそ8割が出穂した日を出穂日として記録します。例年8月10日前後なのですが、この数日間は注意深く田んぼを観察する必要がありました。旅行なんていけません。

3.稲の開花を捉えたい

開花日もまた、収穫時期判定に必要な情報です。ですが、稲の花はごく短い時間しか咲かないので、ほぼ毎年見落とします。何月何日に咲いたのかを画像として残すには、自動で撮り続けるしかありません。

米作りを始めて間もないころから定点観測したいなぁと思いつつ、なかなかできなかった。

  1. 安価に実現する方法がない。農業用の定点観測システムは高価で、個人の農家が試しに入れられる価格ではない
  2. カメラを固定する方法が思いつかなかった。田んぼには柱も木もない
  3. 写真の整理が大変になると予想できた。保険のため1日に4枚撮ると、5ヶ月で6百枚になる

諦めていたところから、実現までの4段階

この取り組みは「思いついてすぐ作った」ではありません。諦めていたものが、一つずつ解けていった過程です。

第0段階:そもそも諦めていた

屋外の定点観測は敷居が高いものだと思っていました。田んぼには電源がない。Wi-Fiも期待できない。定点カメラといえば電源と通信が前提の装置で、自分の田んぼでやれることではないと考えていました。

第1段階:カメラ見つけた

ソーラー充電に対応し、タイムラプス撮影機能を持つトレイルカメラが1万円台で売られていることを知りました。田んぼは家の目の前なので、撮影のたびに画像を取得しなくても様子はわかります。SDカードに記録しておけばひとまずOK。使えそうだな、と思いました。

第2段階:でも固定できない

ところがトレイルカメラは、木の幹のような太い柱に巻き付けて固定することを前提に設計されています。狩猟や獣害対策の道具ですから当然です。でも、田んぼの真ん中にそんな柱はありません。固定方法が思い浮かばず悶々とした日々を過ごしました。


第3段階:雲台を見つけた

カメラの底面には1/4インチの三脚ねじ穴があります。三脚を使えばとも思いましたが・・・

  • 三脚を田んぼに6ヶ月置きっぱなしにするのは非現実的(錆びる、不安定、邪魔、転倒や盗難のリスク)
  • 三脚では稲の生育に合わせた高さ調整ができない。水田に沈められない

ネットで探して自由雲台だけを見つけた

ビス止め可能な雲台を見つけました。単管パイプや杭に固定することができれば、何とかなりそうです。
ですが、最後のピースは探しても見つかりませんでした。そこで3Dプリンタでマウンタを作ることにしました。頻繁に高さを変えるので、どうやったら簡単にできるか、これまた悩みました。解決策を探す日々が続きました。

2025年は良いアイデアが浮かばず、トレイルカメラと雲台を屋内で放置。45mmの角材がホームセンターで数百円で売られているのを見て、これに固定できそうだなと思うようになりました。高さ調整は最初ビスでマウンタを固定することを考えていましたが、最終的にレバー方式でうまくいきました。取り付け最後の難関をクリア。

ハードウェア:自作マウンタの設計

思いのほかしっかり固定できました。杭も斜めになることはありませんでした。

水面ちょい上~1mまでの高さ調整

会津松原農園は直播(じかまき)です。苗を植えるのではなく、田んぼに直接種籾を播きます。だから記録は発芽の瞬間から始まります。カメラの位置は水面より少し上です。杭は水田の中に打ちました。畔は草刈りの時に邪魔になるためです。

稲は最終的に腰の高さ、1メートル近くまで育ちます。つまり6ヶ月のあいだに、カメラの高さを数十センチから1メートルまで変えていく必要があります。そのため、ノブを回すだけでワンタッチで高さを変えられる構造にしました。

現場での小技

自由雲台は本来、屋外での長期使用を想定した製品ではありません。カバーを取り付けていますが、さらに台所用のラップを巻いて防水しました。

写真整理アプリ「fieldcam-organizer」

もう一つの課題は写真整理

  • 5月から10月まで、1日4枚(6時、10時に2枚ずつ)約5ヶ月で、600枚になります。
  • 似たような写真を並べて比較検討するのも一苦労
  • いらない写真じゃなくて、必要な写真だけをピックアップする

1日4枚撮ったうち、いちばんよく撮れた1枚を選ぶ。残りは不要です。つまり作業は「選んで残す」であって「選んで消す」ではありません。しかも、日付ごとにまとまっていてほしい。この動きをするソフトが見つからなかったので、自分で作りました。

写真は一枚当たり2MB以上ありました。単なる記録映像としてはオーバーサイズなのでPowerToysのImage Resizerを使って、一枚当たり500kb以下までサイズダウンしました。

アプリ詳細

Python / Flask 製のローカルWebアプリです。ブラウザで http://127.0.0.1:5000 を開いて使います。基本の流れは3ステップ。

  1. 読み込む:写真フォルダを指定すると、ExifのDateTimeOriginal(撮影日時)を読んで、撮影日ごとにグループ化して並べます(Exifが無ければファイル更新日時にフォールバック)
  2. 残す写真にチェックを入れる:日付ごとに並んだサムネイルを見比べながら、残す1枚を選びます
  3. 実行する:チェックの入っていない写真が <フォルダ>/delete/ へ移動します。削除ではなく移動なので、間違えても取り戻せます

かゆいところに手が届く

  • その日1枚しかない写真は、初回読み込み時に自動でチェックON(選ぶ余地のないものを手作業させない)
  • チェック状態は作業ファイルに自動保存・復元しています。途中でやめても後日再開できます。地味に重要
  • 最後に開いたフォルダを記憶
  • 表示サイズを80〜320pxのスライダーで調整。ざっと見る/細部を見比べるを切り替えられる
  • ライトボックス拡大表示。矢印キーで移動、日付ラベルと「3 / 8枚」の位置表示、日付をまたぐときはワンクッション画面を挟む

仕上げ:タイムラプス動画にする

選び残した写真をつなげて1本の動画にします。使ったのは Clipchamp(Microsoft Office に付属)です。タイムラプスが作れるなら編集ソフトはなんでもいいと思います。

1年やってみて、わかったこと

  • 正確な発芽日がわかりました。種を播いてから何日で芽が出るのか。これまで感覚で捉えていた数字が確定しました
  • 稲の開花日を画像で残せました。大きい成果です。短時間しか咲かず、人間の目では取り逃がしていたものが記録に残りました。開花日は収穫の判断にも効いてくる指標です
貴重な開花写真

撮ろうと思っていなかったものが写っていた

藻(も)による被害の推移も記録できました。いつ頃から湧き始め、いつがピークだったのか。日々の写真を遡ることで、時系列がそのまま再現できました。藻の記録は、来年の水管理や対策の判断にそのまま使えます。